政略夫婦の授かり初夜~冷徹御曹司は妻を過保護に愛で倒す~
「でもきっと弦さんは、私のことを家族として接してくれると思う。たとえこの先、彼の心が変わっても」

 それだけは信じたい。『ゆっくり俺たちと家族になってくれ』ご両親の前で言ってくれたこの言葉は嘘ではないと。

「私、弦さんと家族になれただけで充分なの。彼のご両親にも、本当の娘のように接してもらえているし。……今がすごく幸せだから、これ以上欲張って傷つきたくないのかもしれない。彼に愛されるわけがないって思っていれば、どんな未来が待っていても傷つくことはないでしょ?」

 精いっぱいの強がりで無理して笑えば、美香は悲しげに瞳を揺らした。

「未来の気持ちはわかるけど、傷つかないための予防線なんて張らないでよ。未来は誰よりも幸せにならなくちゃだめ! 私は弦さんのことを好きになってもいいと思うよ、だって未来たちは夫婦なんだから」

 夫婦でも私たちは普通の夫婦ではない。愛し合う者同士がする行為を何度もしたって、心は違う。通じ合っていない。

「それにもし未来を傷つけたら、相手が御曹司だろうと私が許さないから。神様の前で永遠の愛を誓った以上、絶対に未来を幸せにしてもらう!」

「美香……」
< 60 / 235 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop