政略夫婦の授かり初夜~冷徹御曹司は妻を過保護に愛で倒す~
「ひさしぶりに出かけて疲れただろうから今夜、食事に行こうって連絡」

 弦さんに言われたことをそのまま伝えると、美香は「キャー」と声を上げた。

「弦さんってば優しい~! やっぱり私、弦さんは未来のことを好きだと思うなー。……傷つくことを恐れずに、弦さんと向き合ってみなよ。そうすることで弦さんの気持ちも、未来自身の気持ちも見えてくるかもしれないし。もっと前向きにならなきゃ!」

 そう言って美香はポンと優しく私の背中を撫でた。

「“でも”って言うのはナシね。親友のアドバイスを聞き入れて、今夜の食事楽しんできて」

 そう言われては、なにも言い返せなくなる。

「うん、わかった」

 私の返事を聞き、美香は満足げに笑う。

「じゃあ帰ろう。未来は早く帰ってオシャレしないと。きっと素敵なレストランに連れていってくれるよ」

 腕を組んできた美香とともに歩を進め、呼び出して到着したエレベーターに乗り込んだ。

 下がっていく階数字を眺めながら、考えてしまうのは弦さんのこと。そして美香にさっき言われた言葉が頭から離れない。

 私、美香の言う通り傷つくのが怖いからって予防線を張って、好きになったらいけない人だと自分に言い聞かせていたよね。
 今は優しくても、お父さんのように浮気されてしまうかもしれないと。
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