政略夫婦の授かり初夜~冷徹御曹司は妻を過保護に愛で倒す~
「ママの願いを叶えられるって信じてもいいかな?」

 返ってこない答えを求めて問いかけた。

 私の記憶の中のママは優しくて、私のことをとても愛してくれた。そんなママなら、きっと叶えるために頑張れって言ってくれるよね。

 再び歩を進めた足取りは軽い。

 愛されなくたっていい。家族にさえなれればと思っていたけれど、やっぱり私、好きな人と添い遂げたい。幸せな家庭を築いていきたい。その相手は弦さんがいい……!

 もっと弦さんのことを知りたい。だってこんなに惹かれた人は初めてだから。そして彼に好きになってもらえるように頑張ろう。

 急いで帰宅し、弦さんが帰ってくるまでに出かける準備を進めていく。

「これでいいかな?」

 鏡に映る自分を見ては、頭を悩ませる。

 アイボリーのワンピースの胸元は、黒のレースがワンポイントとなっている。それに小ぶりのバッグと少しヒールのあるパンプスを合わせてみた。

 メイク直しもして、イヤリングとネックレスも付け、少しばかりオシャレしてみたけれど変じゃないよね? 大人の弦さんの隣にいても不釣り合いじゃない?

 鏡に向かって何度も問いかけてしまう。
< 66 / 235 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop