政略夫婦の授かり初夜~冷徹御曹司は妻を過保護に愛で倒す~
 顔を上げて竹山さんを見ると、口もとに手を当てて笑いをこらえている。

「……竹山さん?」

 声をかけると竹山さんは「失礼しました」と言って、咳払いをした。

「あまりに奥様が可愛らしかったもので」

 可愛らしい? サラリと言われた言葉に、頬が熱くなる。

「専務が結婚してからというもの、早く帰りたいと仕事に躍起になっている理由がわかりました。こんな出迎えかたをされたら、早く家に帰りたいはずです」

 さっきのことをまた言われ、ただ恥ずかしくて「すみません」と小さく謝った。

 でもやっぱり弦さん、結婚してから無理して早く帰ってきてくれていたのかな? それは私のためだと、自惚れてもいいのだろうか。

「こちらこそすみません、話が反れてしまいましたね。実は専務に急な仕事が入りまして奥様との約束の時間に間に合わず、私が代わりにお迎えに上がりました」

「そうだったんですね、ありがとうございます」

「とんでもございません。準備は……できておりますよね。では行きましょう」

 バッグまで手にしていて、本当に準備万端。これはすごく楽しみにしていたことがバレバレだ。

 竹山さんに続いて地下駐車場へ向かうと、黒のセダンの前で足を止めた。

「どうぞ」

「ありがとうございます」

 後部座席のドアを開けてもらい乗り込むと、竹山さんはドアも閉めてくれた。そして素早く運転席に乗り込むと、車を発進させる。
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