政略夫婦の授かり初夜~冷徹御曹司は妻を過保護に愛で倒す~
「私の名刺をお渡しいたします。もし今後、専務に連絡がつかないときや困ったことなどがございましたら、いつでも私にご連絡ください」

「ありがとうございます」

 私が受け取ると、竹山さんは再び車を発進させる。

「専務のことでお困りのことや聞きたいことはもちろん、専務に対する不満や愚痴でもお聞きしますので、お気軽にご連絡ください」

 バッグミラー越しに見える竹山さんは、至って真面目に言うものだから思わずクスリと笑ってしまった。

「ありがとうございます。……でもこの先も弦さんに対して不満を抱くことはないと思います」

 だって弦さんは私にとって、完璧な旦那様だもの。

「それはなによりです。しかし万が一ということもございますので、その際は是非」

「はい、わかりました」

 竹山さんのおかげでさっきまでの気まずさはない。その後、目的地に着くまで竹山さんと弦さんはいつからの付き合いなのかなど、色々な話を聞かせてもらった。

 車に乗ってから約三十分。着いた先は弦さんと初めて顔合わせをしたホテルのレストランだった。

 ロータリーに車を停めると、竹山さんはすぐに降りて後部座席のドアを開けてくれた。

「どうぞ。専務はロビーでお待ちですのでご案内いたします」

「はい」

 車から降りると、竹山さんはドアマンに車のキーを預けた。彼に続いて玄関を抜けると、オシャレなロビーが広がっている。
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