政略夫婦の授かり初夜~冷徹御曹司は妻を過保護に愛で倒す~
 いつも通りのやり取りなのに、それにさえ幸せを感じてしまう。もっと前向きになろう、変わろうって気持ちになっているからかな。こうして弦さんと一緒にいられるだけで心が満たされる。

 優しい眼差しを向ける彼から目を離せずにいると、弦さんに遅れてやってきた竹山さんは、わざとらしく咳払いをした。

「それでは専務、無事に奥様を送り届けましたので邪魔者は退散いたします」

「あぁ、悪かったな」

「いいえ。どうぞ奥様との素敵なお時間を過ごしていただき、明日からの仕事の活力にしていただけたら幸いです」

 竹山さんがそう言うと、弦さんは顔をしかめた。

「おい、言葉に棘を感じるぞ」

「感じるように言いましたので」

 ふたりの砕けたやり取りに、親密ぶりがうかがえる。たしかふたりは大学時代からの知り合いって言っていたよね。

 そんなことを考えていると、竹山さんと目が合った。

「それでは奥様、またお会いできることを楽しみにしております」

「あ、今日はありがとうございました」

 竹山さんにつられて私も頭を下げる。すると竹山さんは「失礼します」と言って去っていった。
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