政略夫婦の授かり初夜~冷徹御曹司は妻を過保護に愛で倒す~
「俺はお義兄さんと違って、今もそして近い将来結婚した後も彼女のことを大切にしますから。……俺たちも政略結婚になりますが、お互い愛し合っているので」

 棘のある言いかたをする敬一に「やめて」と言いそうになる。

 たしかに私たちは愛のない政略結婚だ。でも、弦さんは私のことを大切にしてくれている。
 それに彼が私のことをどう思っているのか、聞きたくても怖くて聞けずにいた。なのに敬一ってば、どうして言っちゃうの?

 弦さんがなんて言うのかわからない。聞きたくなくて話題を変えようとしたけれど、彼の腕が私の肩に回り、引き寄せられた。

「俺と未来も政略結婚だが、俺にとって未来は大切な存在だ。……だから敬一君が心配する必要はない。結婚式の日に神様の前で、未来を幸せにすると誓ったから」

 弦さん……。

 それはあなたの本心ですか? それとも敬一を安心させるための嘘?

「今度、いつでもうちに遊びに来るといい。未来と待っている」

「行こう、未来」と言われ、肩を抱かれたまま歩を進める。

「あっ……」

 うしろを見ると、口をあんぐりさせている敬一の隣で、椿ちゃんが笑顔で手を振っていた。私も小さく手を振り返し、再び前を向く。
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