政略夫婦の授かり初夜~冷徹御曹司は妻を過保護に愛で倒す~
 どういう気持ちでさっき、敬一に言ってくれたんだろう。だけど今の関係を壊したくなくて、私には聞く勇気が出ない。

 レストランに着くと、出迎えてくれた支配人に案内されたのは、一番奥の窓側の席。
 支配人に椅子を引いてもらい、弦さんと向かい合って座る。

 どうやら予約時にコース料理を注文してくれていたようで、少しするとすぐに前菜が運ばれてきた。

「いただきます」

 テーブルマナーはさんざん学んできたが、こういった場所に来る機会は少なかったから、今でもちょっぴり緊張する。一緒に食事をしているのは弦さんだから余計だ。

 ソワソワしながらも前菜を食べ進めていると、先に食べ終えた弦さんが聞いてきた。

「敬一君は昔からずっと未来に対して、あんな感じだったのか?」

 弦さんの言う『あんな感じ』とは、私に少々……いや、けっこうべったりだってことだよね?

「……はい」

 幼い頃ならまだしも、大人になっても姉弟仲が良いというのはやっぱり他人の目には、普通に見えないのかな。

 たしかにちょっと敬一は、私に対して過保護なところがある。でもそれはきっと、私のことを思ってだろう。
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