政略夫婦の授かり初夜~冷徹御曹司は妻を過保護に愛で倒す~
 口には出したことはないけれど、両親の自分に対する態度と私に対する態度が違うことを、間違いなく敬一も気づいているはず。

 それなのに私の前で口に出さないのは、敬一の優しさだと思う。彼だけは家族として接してくれた。

 本当に敬一の存在に私は救われていたんだ。それを弦さんにもわかってほしい。

「さっきは敬一が失礼なことを言ってしまい、すみませんでした。でも悪い子じゃないんです。真面目で優しくて、私は何度も敬一の存在に助けられてきて……」

 敬一のいいところを上げていくと、弦さんはゆっくりと首を縦に振った。

「そうか。……未来にとって敬一君は大切な存在なんだな」

「はい」

 とても大切な存在だ。

「俺には兄弟がいないから、上か下がいたらどんな感じだろうと何度も想像したことがある。……きっと俺も未来が姉だったら、敬一君のように過保護になっていたかもな」

「えっ?」

 意味深なことを言うと、弦さんはクスリと笑う。

「守ってやりたくなる。敬一君も同じ気持ちなんだろう。案外彼とは気が合うかもしれない」

 どこか楽しげに話す弦さんに、どう反応すればいいのやら……。

 まず彼の『守ってやりたくなる』って言った相手は、私ってことだよね? だったら本当に困る。さり気なく言われた一言にはどんな気持ちが込められているのか、すごく気になるもの。
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