政略夫婦の授かり初夜~冷徹御曹司は妻を過保護に愛で倒す~
「なにか見たい映画があったら、あとで教えてくれ」

「はい」

 前菜を食べ終えると、次の料理が運ばれてきた。話題も変わり、聞くタイミングを逃がす。

 でもいつかは弦さんに気づかれるはず。私が両親とうまくいっていないことに。

 だったらちゃんと私の口から伝えるべきじゃないかな。弦さんなら私の話を最後まで聞いてくれるはず。家族になりたいと思っているからこそ、すべて包み隠さず話したい。

 だけどそれはここで話すことじゃないよね。今度の週末、ゆっくり過ごそうって言っていたし、そのときに話してみよう。

 そう心に決めて、その後はおいしい料理と素敵な夜景。そして弦さんとの楽しい時間を満喫した。



「ありがとうございました。お気をつけておかえりくださいませ」

 支配人に見送られ、レストランを後にする。すると彼は当然のように私の腰に腕を回した。

 慣れなくて身体が強張る。エレベーターホールに着くと、弦さんはさらに私との距離を縮めた。

 肩と肩が触れ、びっくりして顔を上げれば弦さんと目が合う。すると彼はそっと私の耳元に顔を寄せた。

「悪い、言い忘れていた。レストランを予約した時に、部屋も取ったんだ。……今夜はここに泊まろう」
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