政略夫婦の授かり初夜~冷徹御曹司は妻を過保護に愛で倒す~
 いつも思うの。こうして身体を求められるたびに、愛し合う行為とはなんだろうと。

 好きという気持ちがなくても、この行為をできる人もいる。もちろん本当に愛し合っている相手でなければできない人だっている。

 私はずっと結婚は自由にできないとわかっていたから、愛がなくてもできると思っていた。

 実際に初めて弦さんに抱かれた時は、彼に惹かれていなかったもの。

 でも弦さんの存在が大きくなっている今は違う。好きな人とじゃなきゃできないよ。

 キスも身体に触れられるのも、こうして受け入れることも全部。

 だけど弦さんは? 好きじゃなくても、後継ぎを作るためと割り切っていつも私を抱いているのだろうか。

 そう思うと泣きそうになり、「弦さん」と彼の名前を呼んだ。

「ん? どうした?」

 優しい声色で聞かれ、鼻がツンとなる。

「つらいか?」

 心配そうに聞かれ、首を横に振ると弦さんは一度私の中から出て、手を広げた。

「顔を見せて」

 言われるがまま彼と向かい合うと腰に腕が回り、引き寄せられた。

「ん、こっちのほうがいい」

 そう言って再び繋がった身体。

 この行為は愛がある上で成り立っていると信じたい。
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