政略夫婦の授かり初夜~冷徹御曹司は妻を過保護に愛で倒す~
 人懐っこくて愛らしい。犬がいる暮らしに何度憧れたことか。

「じゃあ犬を飼うか」

「えっ?」

 突然の提案に耳を疑う。

「大好きってことは、ずっと飼いたいと思っていたんだろ?」

「それはそうですけど……」

「だったら飼おう。未来の願いを叶えてやりたい」

 優しい顔をして言われた言葉に、胸が苦しくなる。

 本当、弦さんはいつもどういう気持ちで私に接し、優しい言葉をかけてくれているのだろうか。

「じゃあさっそく見に行くか」

「見に行くって……犬をですか?」

「あぁ、未来が気に入る子が見つかるといいな」

 そう言って立ち上がり、出かける準備に取りかかろうとする弦さんを急いで止めた。

「待ってください」

 私も立ち上がって彼のもとへ駆け寄る。

「どうした?」

 不思議そうに私を見る彼に尋ねた。

「これから行くところってペットショップですか?」

「そうだが……」

 弦さんは意味がわからないと言いたそうに首を傾げる。

 犬を飼おうと思ったら、ペットショップに行くのは当然の流れ。でも……。

「あの、私……ずっと犬を飼える日がきたら、保護犬を迎えたいと思っていたんです」

「保護犬?」

「はい」

 幼い頃、テレビで捨て犬や迷い犬の特集を見て、ショックを受けたことがある。
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