政略夫婦の授かり初夜~冷徹御曹司は妻を過保護に愛で倒す~
「奥様も専務とご結婚され、幸せではないでしょうか? ……あんな暮らしをされてきたんです。専務と一緒になったことで幸せになってほしいです」

 あんな暮らしって……どういうこと?

 竹山さんの意味深な言葉に心が騒つく。

「あぁ、俺もそうだよ。両親から受けるはずの愛情を与えられずにきたんだ。どれほどつらい思いをしてきたか。これからはそんな思いをさせたくない」

 苦しそうに言う弦さんに、疑惑が確信へど変わる。

 彼は知っていたんだ。私がこれまでどんな環境の中で育ち、両親からどんな風に育てられてきたのかを。
 だから弦さんは私を憐れんで結婚してくれたの? あの家から私が出られるために。
 優しくしてくれたのは、私が今までつらい思いをしてきたから?

 信じたくないけど、そう思えば思うほどすべて辻褄が合う。

 毎夜あんなに愛してくれたのも、私に同情してかもしれない。可哀想な私を慰めてくれていただけだったのかも。

 もしそうなら、自分がバカみたいだ。愛されているかも……と何度も勘違いしそうになり、ありのままの私を受け入れて、好きになってほしと思い、両親のことをいつ打ち明けようかと悩んでいたのだから。
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