政略夫婦の授かり初夜～冷徹御曹司は妻を過保護に愛で倒す～

　私は愛されてなどいない。ただ、同情されていただけ。とっくに私と両親の関係も知られていたなんて。

　その後も弦さんと竹山さんはなにかを話していたけど、私の耳には届かず、そっと踵を返した。

　キッチンへ戻り、注いだ珈琲をシンクに流してカップを洗う。すべてきれいに片づけて自室に入った。

　ドアに寄りかかり、弦さんと出会ってからのことを思い出す。

　親に決められた政略結婚。お互いのことをほとんど知らなかった。顔合わせの日から何度か会っただけで結婚した関係。

　それなのに彼に愛されているかも……なんて、よく思えたものだ。この先、お父さんみたいに浮気されたらどうしようとか、先走った心配までして本当にバカみたい。
　私は最初から愛されてなどいなかった。ううん、私が愛されることなどないんだ。

　よく考えればわかることだった。顔だって至って普通だし、とくに優れている特技や才能もない。

　そんな私が、弦さんのような人に好かれるわけがないじゃない。ただ、同情されていただけだったんだ。