同期の御曹司様は浮気がお嫌い
「安西さんには取り敢えず三日間休んでもらいます。出勤停止処分です」
「そんな!」
「商業ビルから苦情がきています。何も処分なしというのはできません。不倫などの不貞行為は就業規則に違反します」
「でも私は不倫なんてしてるつもりは……」
「下田くんも安西さんに隠していたと認めています。ですが、これを見てください」
そう言うと社長はテーブルに置いたノートパソコンの画面を私に向けた。そこにはSNSの画面が写され、商業ビルでの騒ぎの動画が投稿されている。
「これは……」
「あの時いた人が撮ったんでしょう。この動画が拡散されています。商業ビルの名前のハッシュタグ付きで」
体が震える。動画を食い入るように見つめた。私の顔は写っていないアングルとはいえ店の看板は見えているし、音声はノイズが入ることなくはっきり怒鳴り声が聞こえる。女性のカバンについたマタニティマークのキーホルダーまではっきり見えた。
「商業ビルと会社のイメージが悪い方に拡散しました。男女の修羅場は大変なイメージダウンです。取り敢えず三日間の出勤停止ですが、その間に安西さんと下田くんの処分を決めます」
「はい……」
ここまで問題が大きくなるなんて思わなかった。これでは反論なんてしても意味がない。大人しく処分を待つしかないだろう。
会議室から出ると私はカバンを持って会社を出た。他の社員が視線を向けてきたけれど、もうどうでもよかった。
「安西さん!」
振り返ると優磨くんが追いかけてきた。
「待って……」
私の前で止まった優磨くんは呼吸を整えた。
「優磨くん……ありがとう」
「何が?」
「心配してくれて」