同期の御曹司様は浮気がお嫌い

「ここ最近はずっとあの姿です。寝ぐせは私が指摘するまで気づいていませんし、ネクタイを忘れてきたこともあります。会議の時間を間違える、話しかけてもぼーっとしていることが多くなりました」

「顔色も悪いように見えました。体調はいかがですか? 今はホテル暮らしですか? ご実家ですか? マンションにはまだ帰ってませんか? ちゃんと食べているのでしょか?」

矢継ぎ早の質問に泉さんは目を見開いた。

「すみません……優磨くんの心配をする立場ではないのに……」

別れたのに図々しい。私は本来泉さんとこうして会うのも許されないのかも。

フッと泉さんが笑った。

「すみません、波瑠様が優磨さんを気にかけてくださっていて安心しました」

「いえ……みっともなく引きずっているだけです……」

いつまでも想うなと彼は呆れるだろう。

「最近はずっとホテルとご実家を行き来しています。美麗さんも優磨さんの様子を心配しています」

「確かに今見て驚きましたが、どうすることもできません。私に怒っているんです。だから優磨くんは怒りで仕事が手につかないのでしょう。申し訳ありません」

泉さんに頭を下げた。あんなに熱心だった仕事を疎かにさせるほど優磨くんを怒らせてしまったのだ。

「お二人に何があったのか詳しいことは聞いておりません。怒っているのかもしれませんし、悲しんでいるのかもしれません」

泉さんの言葉に頭を上げた。

「波瑠様と離れて後悔しているようにも見えます」

「え?」

後悔? 優磨くんが?

「失ってから気づくんです。大事な人ほど何かあると動揺する。だから、もう一度優磨さんと話し合ってほしいのです」

そう言われても振られたのは私だ。

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