同期の御曹司様は浮気がお嫌い

『他の男に抱かれた汚い体で触らないで』

優磨くんに触れてはいけないのだと、思わずパッと手を振り払ってしまった。

「あ……」

振り払ってから後悔する。

「ごめんなさい私……」

「いいんだ。そうさせたの俺だから……」

優磨くんも涙を堪えているように唇を噛んだ。

「拒絶されるのってこんなにショックなんだ。俺はそれを波瑠にしたんだね……」

「ごめんなさい……」

「謝らないで……俺は波瑠ともう一度やり直したい」

それでも、私は優磨くんの元に戻りたいと思えない。

「私……優磨くんに相応しくないの」

「そんなことない!」

「拒絶された記憶は消えない……」

「波瑠……」

「もう会わないようにしよう」

「嫌だ……」

「私たちうまくいかないよ。不安を抱えたままそばに居たくない」

優磨くんの頬に涙が伝う。
涙を拭いてあげたい。抱き締めて頭を撫でてあげたい。でももう触れられない。私は優磨くんの嫌いなウソつきで、言葉を信じられない汚い女だから。

「あ、仕事はこのまま続けてもいいかな?」

私の唐突な言葉に優磨くんは「え?」と目を見開く。

「慶太さんのお店。もし私があそこに勤め続けることが嫌なら辞めるんだけど……」

優磨くんはブンブンと勢いよく首を横に振る。

「続けていい! 波瑠が続けたいならずっと!」

目を真っ赤にして必死に言葉を出しているようだ。

「ありがとう。仕事とっても楽しいから嬉しい」

本心からの言葉だ。精一杯笑顔を向けた。それを見て更に優磨くんの目から涙が落ちる。

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