同期の御曹司様は浮気がお嫌い
「もう会わないようにしようって言ったのに」
「納得はしてないよ。俺は嫌だって言ったでしょ」
真面目な顔をしてじっと私を見つめるから、いつまでも優磨くんを忘れられないじゃないか、と溜め息をつく。
「車の中で待ってれば寒くないよ?」
「ここなら波瑠が帰ってきたのがすぐに分かるから。それに、今夜はこれを渡しに来たんだ」
私の前に封筒を差し出した。
「下田に渡したお金を返してもらったから」
「え? 本当に? ありがとう!」
これには感激して笑顔になってしまう。
「ちゃんと返してくれたんだ」
「元々目的は金じゃなかったからね」
「そっか。離婚しないでちゃんとお父さんやれればいいんだけど……」
「大丈夫。離婚はしないだろうね。今後別の女に手を出さなければ」
「調査報告書を自宅に送ったんでしょ? 奥さん見ちゃってるかも……」
「あれは一部だけでコピーはないよ」
「へ?」
私の間抜けな声に優磨くんは笑う。
「下田の家にも送ったなんて嘘だよ。まだ波瑠にちょっかいかけてるなんて知ったら、奥さんは波瑠を不倫相手として今度こそ訴えかねないからね」
会社にバレたときは下田くんが結婚したことを黙っていたせいだと無理矢理納得して、奥さんは私を訴えることはしなかった。けれど再び下田くんと会っていると分かったら今度こそ訴えられて慰謝料を請求されていたかもしれない。
「そこまで考えてくれたの?」
「うん。波瑠が苦しまないようにすることしか考えてないよ」
顔が赤くなったのは暗いから気づかれてないといいなと思う。別れたはずなのに優磨くんは変わらず優しい。私の知らないところでずっと守ってくれていた。