同期の御曹司様は浮気がお嫌い

その費用を親から借りることができなかった。今までこんなことはなかったのでお金を借りる理由を説明できない。
仕方なく家にある不要なものを売り払うと、格安のアパートに引っ越しせざるを得なくなった。

下田くんからは相変わらず連絡が来るけれど、電話もメッセージもすべて無視した。また不倫を疑われたら今度こそ解雇されるのではないかと不安になった。










「はぁ……」

閉店間近のスーパーで割引された惣菜のパックを見ながらため息をつく。
引っ越すと会社からは遠くなり帰宅時間が遅くなってしまう。料理する気も起きず、一気に生活が乱れてしまった。

『見切り品』の商品ワゴンで品定めしていると、「安西さん?」と声をかけられた。
振り向くとそこには優磨くんが立っている。

「え? 優磨くん?」

何週間ぶりかに会った優磨くんは髪をきっちりまとめて今まで以上に上等なスーツを着ている。その姿は整った顔を余計に引き立たせている。

「どうしてここにいるの? 安西さんの家はこの辺じゃないよね?」

「あ……」

何と言って説明すればいいのだろう。生活できなくて引っ越したなんて城藤の人には恥ずかしくて言えない。

「…………」

優磨くんは黙り込んでしまった私の持つカゴに視線を移すから更に恥ずかしくなる。中には惣菜と野菜ジュースが入っている。いずれも割引シールが貼られたものだ。

「安西さん痩せたね。大丈夫?」

優磨くんの優しい声に泣きそうになるのを堪える。

「大丈夫! ダイエット中なの。ここら辺に越してきたのも会社まで時間をかけて通勤しようと思って……その……カロリーを消費しようとね……」

苦しい言い訳なのは分かっているけれど嘘をつかずにはいられない。
優磨くんは寂しそうな顔をする。それが余計に私を焦らせる。

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