同期の御曹司様は浮気がお嫌い
「波瑠、おかえり」
優磨くんが笑顔になるから私まで顔が緩むのを止められない。まだ私はこの人を愛しているのだと思い知る。
「毎日ここにきて大変じゃないの?」
「全然! 波瑠に会えて元気貰ってるし」
ストレートに言われては照れて言葉を返せない。
「これ……お土産」
「何?」
私が広げた袋の中を見た優磨くんは「コロッケパン!」と大声を上げる。
「波瑠が俺に?」
ニコニコと私に笑顔を見せるから「慶太さんがこれを優磨くんにって」と『慶太さんが』を強調した。
「めちゃくちゃ嬉しい!」
袋の中には私が食べるパンも入っているので、どこかで座って食べようと思った。恥ずかしいけれど私の部屋に入れるべきだろうか。
「優磨くん、よければ部屋にどうぞ……パン食べよ……」
「今夜は彼氏来ないの?」
「あ、うん……」
そういえばそんな嘘をついていたんだった。
「週末なのに会いに来ないなんて彼氏は不定期休みの人?」
「まあそんなとこ……」
優磨くんは「へー」と信じていないような声を出す。
「波瑠の部屋には入りたいけど、彼氏に悪いからやめとくよ」
「どうせ私は彼氏がいるのに男性を部屋に誘うような女ですよ……」
また嫌みをぶつけてしまう。それなのに優磨くんは「くくっ」と笑いを堪えている。
「じゃあ寒いから俺の車で食べよう」
「いいの?」
私が優磨くんの車にまた乗ってもいいのだろうか。
「うん。助手席は波瑠専用だから」
顔を赤くした私に「先に乗ってて」と言い残して近くの自動販売機に飲み物を買いに行った。
慣れた動作で助手席に座った私は自分の分のパンを出して膝の上に置く。
戻ってきた優磨くんは缶コーヒーを差し出した。受け取る私の手が触れないように先端を持って。