同期の御曹司様は浮気がお嫌い
「え、どうしてここに?」
家の前に来るはずじゃなかったのか。
「仕事早く終わったから迎えに来たんだけど……」
優磨くんは私の隣の男の子に不審な目を向けた。
「波瑠さんの知り合いですか?」
男の子の言葉に返事をしようとすると「恋人です」と優磨くんがぶっきらぼうに言い放った。
「ちょっと優磨くん!」
男の子は目を見開いた。それは私に恋人がいたことが意外なのではなく、優磨くんに睨まれて驚いたからだ。真っ直ぐ男の子を睨み続ける優磨くんに私の方が慌てて、「これ私がお店に置いてくるから、帰りな」と言った。
「いや、僕が置いてきますから波瑠さんが帰ってください」
「でも……」
男の子は私の耳元に顔を寄せた。
「恋人さん僕のこと超睨んでるので、このまま行ってください」
そう言って飾りの入った袋を私の手から取った。
「ごめんね、ありが……」
お礼を言い終わらないうちに優磨くんに手首を掴まれ引っ張られた。
「優磨くん!」
無言で私の手を掴む彼はとても怖い顔をしている。
「お疲れ様です」
男の子が苦笑いしながら手を振るから、申し訳ない思いで手を振り返す。すると掴まれた手首が一層強く握られた。
「痛い!」
思わず手を振り払った。それに顔を歪めた優磨くんは再び私の手首を掴む。
「放して!」
「放さない」
冷たい声が抵抗する気力を奪った。あれだけ触れるのを嫌がったのに、今は何が何でも放そうとしない。
駐車場まで手を引かれ、優磨くんの車の助手席に押し込まれた。運転席に座った優磨くんは「あいつ誰?」と低い声で詰め寄る。