同期の御曹司様は浮気がお嫌い
「誰って、スタッフだよ」
「なんで一緒に買い物してるの?」
「慶太さんに頼まれて、お店の飾り買ってたの……」
「それだけ? 笑顔を見せて、特別親しそうだったけど」
「え? 普通だよ……」
「あんなに顔近づけて……手だって触れてたよ。俺には手を振り返してくれないのに、あいつにはするんだ」
一人で拗ねる優磨くんに呆れる。
「だからってさっきの態度は酷いよ……私、今は優磨くんの恋人じゃないよ。お店の子の前でそんな主張しないで」
優磨くんは顔をしかめた。怒りたいのは私の方だ。掴まれた手首はまだじんと痛む。さっきの男の子にだって変に思われただろうに。
「波瑠に男が近づくと気分が悪い……」
「そんなこと言う権利はないよ。私たちもう終わってるのに」
優磨くんの目が徐々に赤くなったのを見た。
「私、あの子と付き合ってるの」
低い声で、でもはっきりと伝えた。優磨くんが目を見開く。
「だから彼の前で優磨くんが恋人だなんて言われたら困る」
また嘘をついた。心が痛む。だけどこれで優磨くんが諦めてくれればいいと願った。
「そんな嘘は笑えないよ……」
声が震えている。
「私の言葉を信じるって言ったでしょ?」
「まだ学生だろ? 子供じゃないか! あいつじゃ波瑠を幸せにできない……」
「優磨くんには関係ない!」
狭い車内で叫んだ。
「私が誰と付き合おうと口出す権利はないじゃない!」
優磨くんが息を呑んだ。
「そう……だよね……」
そう呟いて車を発進させた。
しばらく無言だった。ハンドルを握る優磨くんの手が震えている。私はそれに気づかないふりをして窓の外を見ていた。
私のマンションの駐車場で車が停まった。