同期の御曹司様は浮気がお嫌い

「もっと無理っ……」

不貞行為が嫌いな優磨くんを浮気相手になんてできない。

「私が浮気したって責めたのに、その優磨くんが浮気相手になるなんて言うの?」

「俺の価値観もプライドも、全部捨てる……最低な存在に堕ちてもいい。それほどに波瑠が欲しいって願うから」

優磨くんの腕が私の腰を一層引き寄せた。

「私はもう男性とまともに付き合えないと思う。適当に付き合う彼氏の、さらにそれ以下の存在で優磨くんはいいの?」

「そばにいられるならどう扱われてもいい。俺を拒絶しないで……頼むから……」

誰よりも浮気を嫌っていたはずなのに、そんな立場に自分からなることを望むの? そんなこと、私は優磨くんに望まない。

「勝手だよ……拒絶して責めたくせに……信じてくれなかったのに……」

「ごめっ……ごめんなさい……」

優磨くんも今きっと泣いている。私の頭に顔をつける彼の声は震えている。

「本当に少しでいいから……俺のそばで笑って……声を聞かせて……指一本でも肌に触れさせて……波瑠を感じられたら、それだけで俺は頑張れるから……」

「優磨くんの気持ちに向き合ってくれる相応しい女性はいるよ。御曹司と私じゃ住む世界が違うんだから」

「俺は……」

「いずれ社長になるんでしょ。私みたいな凡人の浮気相手なんかになっちゃだめ」

「波瑠……」

「優磨くんがずっと離れないって保証が欲しいの。けど未来なんて分からないし、形のないものをどうやって保証できるの? 愛情が変わらないって証明はどうすればいい?」

「…………」

そんなの優磨くんにだって分からないだろう。人の心の移り変わりを永遠に止めることはできない。

< 147 / 162 >

この作品をシェア

pagetop