同期の御曹司様は浮気がお嫌い
「もっと無理っ……」
不貞行為が嫌いな優磨くんを浮気相手になんてできない。
「私が浮気したって責めたのに、その優磨くんが浮気相手になるなんて言うの?」
「俺の価値観もプライドも、全部捨てる……最低な存在に堕ちてもいい。それほどに波瑠が欲しいって願うから」
優磨くんの腕が私の腰を一層引き寄せた。
「私はもう男性とまともに付き合えないと思う。適当に付き合う彼氏の、さらにそれ以下の存在で優磨くんはいいの?」
「そばにいられるならどう扱われてもいい。俺を拒絶しないで……頼むから……」
誰よりも浮気を嫌っていたはずなのに、そんな立場に自分からなることを望むの? そんなこと、私は優磨くんに望まない。
「勝手だよ……拒絶して責めたくせに……信じてくれなかったのに……」
「ごめっ……ごめんなさい……」
優磨くんも今きっと泣いている。私の頭に顔をつける彼の声は震えている。
「本当に少しでいいから……俺のそばで笑って……声を聞かせて……指一本でも肌に触れさせて……波瑠を感じられたら、それだけで俺は頑張れるから……」
「優磨くんの気持ちに向き合ってくれる相応しい女性はいるよ。御曹司と私じゃ住む世界が違うんだから」
「俺は……」
「いずれ社長になるんでしょ。私みたいな凡人の浮気相手なんかになっちゃだめ」
「波瑠……」
「優磨くんがずっと離れないって保証が欲しいの。けど未来なんて分からないし、形のないものをどうやって保証できるの? 愛情が変わらないって証明はどうすればいい?」
「…………」
そんなの優磨くんにだって分からないだろう。人の心の移り変わりを永遠に止めることはできない。