同期の御曹司様は浮気がお嫌い
「浮気相手だなんて、そんな軽い立場でいるのに私からずっと離れないなんてどうして言い切れるの? 二番目なんて、いつだってすぐに離れられる都合のいいポジションじゃん」
優磨くんの体が小さく震えた。
「波瑠、ごめん……」
「帰って……」
「でも、俺は……」
「優磨くんを信じることができなくてごめんなさい。もう帰って」
「聞いて」
「何も聞きたくない」
「ずっと前から波瑠とけっこ…」
「もう聞きたくないの!」
両耳を手で塞いだ。
優磨くんが必死で言葉を発しても私にはくぐもった音しか聞こえない。塞いだ手を優磨くんの手が強引に耳から引きはがそうとする。
「いや!」
どうして私の話は聞いてくれなかったのに、自分の話は強引に聞かせようとするのだ。
「やだよ! 聞きたくない!」
下を向いて優磨くんを拒否する。
「なんなの……」
どうして私が嫌だと抵抗しても強引に迫ってくるのだ。優磨くんも下田くんも弱い私には力ずくでどうにかすればいいと思っているのだろうか。
強引にキスをする。強引に引っ張る。聞きたくもないのに嫌な言葉を囁く。
「私の意思はいつだって無視なんだよね……」
優磨くんの手の力が抜けて焦ったように目を見開いた。私が耳から手を離すと優磨くんの手も離れる。