同期の御曹司様は浮気がお嫌い

「帰って。そんな提案二度と私にしないで」

「でも……」

「私に信じてもらう努力っていうのが気持ちを無視した乱暴な扱い? これで優磨くんの何を信じればいい?」

「…………」

優磨くんはもう言葉も出ないようだ。

「ね、私たちうまくいかないんだよ」

優磨くんの目から落ちた涙が頬に伝ってお互いの服に落ちる。城藤の御曹司を何度も泣かせる女なんて私くらいなものだろう。

「本当のことを言って。もう俺を愛してない?」

「っ……」

真剣な優磨くんから目が離せない。

「お願いだから、波瑠の本心を聞かせて」

「私は……優磨くんを……」

まだ愛している。でもそれを言う覚悟がない。
もう愛していないと言えば優磨くんも私も終わりにできる。なのにそれさえも言えない。だって優磨くんを愛している。

「…………」

黙ってしまう私に何も言わずに優磨くんは手で涙を拭う。

「俺は波瑠をずっと想ってるから離れない。それを証明できるまで待ってて」

そう言って私から体を離した。

「今は答えを聞かない。無理強いしてごめんね」

優磨くんは車まで歩いていく。車内に入る直前に振り返って「愛してる」と私の目を見て言った。

車が駐車場から走り去ると私はその場にしゃがみこんだ。
優磨くんに掴まれた手首を指でなぞる。

二番目でもいいなんて言われたことに驚いた。優磨くんの口からそんな言葉が出るなんて、そこまで言わせるほど追い詰めたことが悔やまれる。
でも欲深い私の望みは言葉じゃない。優磨くんの愛情を信じられる確かな証拠が欲しい。

だってもう傷つきたくない。


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