同期の御曹司様は浮気がお嫌い
「波瑠ちゃんが優磨のことを愛してるなら助けてほしい」
「っ……」
できるだろうか。私に優磨くんを助けられる?
「波瑠ちゃんを愛してるのに、違う女と結婚しちゃう……美麗は優磨に幸せになってほしいのに、美麗には優磨を助ける力がないの」
美麗さんは切ない表情を見せる。それは優磨くんに似てとても美しかった。
優磨くんが結婚してしまったら、もう私に会ってはくれなくなる。触れてくれない。笑いかけてくれない。ずっと愛すると言ってくれたその証明はできないまま、結局は離れていく。
そんなの耐えられる気がしない。
「優磨くんを取り戻します……」
「ありがとう」
美麗さんの目から頬に涙が伝った。
「ここだよね泉ちゃん?」
「ちゃん付けしないでください。このチャペルに優磨さんはいます」
連れてこられたのはどこかのリゾート地だ。目の前には白っぽいレンガで作られたチャペルが建つ。花で装飾されたアーチをくぐると目の前には花畑が広がり、噴水の水が数メートルの高さに吹き上がっている。
正面の扉を開けると広いホールのさらに奥に大きな木の扉がある。開けるのを躊躇うほど扉に彫られた天使は見事だ。
「まさに今この扉の向こうに優磨がいる」
美麗さんの声は何故か面白がっているようだ。
「波瑠ちゃん覚悟はいい?」
覚悟なんてない。この扉を開けたら大勢の参列者がいる。一番奥にはタキシードを着た優磨くんがいる。そしてその横にはウエディングドレスを着た花嫁がいるのだ。その人から優磨くんを奪う覚悟なんてできていない。