同期の御曹司様は浮気がお嫌い
「結婚式のために来たんじゃないんだ」
「え?」
「ここには俺しかいないよ」
そういえばチャペル内は静かで生花装飾一つ見当たらないし、神父も参列者もいない。
「私……優磨くんが結婚しちゃうのかと思って……」
「乗り込んできたの?」
私は顔を赤くしながらこくりと頷いた。
「嫌だったから……優磨くんが誰かのものになっちゃうなんて耐えら……」
言い終わらないうちに唇を塞がれた。角度を変えて何度も貪られ、優磨くんの頬も私の涙で濡れる。
「波瑠……嬉しい……来てくれて……愛してる」
「んっ……」
キスの合間に喋るから唇がさらに擦れる。
「ほんとに? ……結婚式じゃないの?」
「違う。ここは下見だよ。俺と波瑠の式のね」
唇を離した優磨くんは私の頬を両手で包む。
「波瑠が望むずっと離れない証明をするのは入籍しかないって」
「私と……?」
「俺が一生波瑠から離れないって言葉で言っても信じてくれないなら、もう形から証明するしかないと思った」
優磨くんは苦笑しながら「もっと早くそうすればよかった」と呟く。
「波瑠が離れてしまうことに焦って、そんな当たり前なことに気づけなかった。とにかく波瑠を取り戻したくて、ひたすら愛情をぶつけるしかできなかった。波瑠のことになると余裕がなくなるんだ」
悲しそうに笑って「ずっと波瑠だけしか見えてない」と囁いた。
「波瑠との式場を探してここを見学してたんだ。婚姻届けも俺のとこは書いて用意してあるし、諸々こっそり準備ができたら波瑠を迎えに行くつもりだった」
「そんな……ことっ……言ってくれれば……」
涙が止まらない。嗚咽が漏れる。