同期の御曹司様は浮気がお嫌い
「やだ! 美麗赤いドレス着るの! だから波瑠ちゃんはピンクにしてね!」
「勝手に決めるな!」
また姉弟喧嘩が始まってしまった。すると入り口から「美麗さん」と泉さんが声をかけた。
「私たちはもう行きますよ」
この言葉に美麗さんは怒るのをやめて立ち上がった。
「さて、美麗お腹空いたから帰るね。後は二人でごゆっくりー」
そう言って手を振ると入り口の泉さんの元へ歩いていく。
泉さんは私と優磨くんにお辞儀をすると美麗さんと共にチャペルの扉を開ける。
「ねえ泉ちゃん、美麗ステーキ食べたい」
「今からご自宅にお送りしますので家政婦さんにお願いしてください」
「泉ちゃんの意地悪! ね、今から美麗と二人でどっか行こうよー」
「仕事中に社長の娘と遊びになんて行きませんよ」
「真面目だなー泉ちゃんは。じゃあプライベートで」
そんな会話は扉が閉まるまで聞こえていた。
「まったく……騒がしいな姉さんは」
「ふふっ」
ずっと黙っていた私は思わず笑った。
「波瑠?」
「あ、ごめん。美麗さんって不思議な人だなと思って」
「あれが家族って本当に疲れるから」
「でも楽しそうだね」
「波瑠も姉さんと家族になるんだよ」
「え?」
「俺と結婚するってことは美麗は波瑠の義姉だし、名前も城藤波瑠になるんだ」
「あ……」
「俺はいずれ会社を正式に継ぐつもり。波瑠には苦労をかけると思う。城藤の一員になるのは波瑠にとって良いことばかりじゃないかもしれない」
「うん……」
優磨くんが私の手を握るから、私もその手を握り返す。