同期の御曹司様は浮気がお嫌い
「それでも俺は波瑠にそばにいてほしい。もうこの手を振り払ったりしない。死ぬまでそばにいる。誓うから」
私は何度も頷く。そのたびに涙が頬から顎に流れて揺れて落ちる。
「やっぱり浮気相手じゃ嫌だ。波瑠の一番になりたい。俺だけを愛してほしい」
「嘘なの……彼氏なんていない……優磨くんしか愛せないよ」
「よかったー……」
安心したのか満面の笑みに私も笑う。
「ごめんなさい……」
「いいんだ。結婚式を壊す気で来てくれてありがとう」
「怖かったけど……優磨くんを失いたくなかった……」
「ちょっと待ってて」
優磨くんは立ち上がって参列席のイスに置かれたカバンから何かを取り出した。
再び私の前に膝をついた彼の手には小さな箱が握られていた。
「ずっと前から作るよう依頼してたんだ。デザインが決まらなくてやっと完成した」
私に向けて開けられた箱の中には指輪が入っている。
「俺の友人のジュエリーデザイナーに依頼して、波瑠のイメージを伝えて特別にデザインしてもらったんだ」
「嬉しい……」
目が潤んできた。これは世界で私だけの特別な指輪だ。それを優磨くんの手で私の薬指に嵌められた。緩くもきつくもなくぴったり馴染む。
「でも指のサイズはどうして分かったの?」
まだ一緒にジュエリーを選んだことがないのにどうして分かったのだろう。
「別れる前、寝てる間にこっそり測った」
「え?」
「ずっと前からプロポーズしたかった。波瑠の気持ちを待つなんて言いながら、本当は自信がなくて怖かったんだ。波瑠に断られるんじゃないかって」
「そんなこと絶対にないよ」
優磨くんの気持ちが嬉しくて反対の手で指輪が嵌った指を包む。