同期の御曹司様は浮気がお嫌い
婚約者の御曹司とのその後
◇◇◇◇◇



使い慣れないオーブンの説明書を見ながらチキンを入れて温度を設定する。
鍋の中のビーフシチューをかき混ぜると、冷蔵庫に入れた手作りケーキの出来栄えをもう一度確認する。

「優磨くんの好きなワインは買ったし……大丈夫かな……」

呟きながらプレゼントの置き場所も確認した。

優磨くんと迎える初めてのクリスマスは休みを取ってくれて、イブの今夜からはずっと一緒だ。
特別な夜は外食することなく家で過ごすことにした。優磨くんが仕事で少し遅くなるのも理由だけど、あまり高級な店では私が緊張してしまうと思ったからだ。
お店には負けるけれど今日のために料理は頑張ったつもりだ。後は優磨くんが帰ってくるのを待つだけだ。

「ただいまー」

玄関から聞こえた声に私は笑顔で彼を迎える。

「おかえりなさい」

私の顔を見た優磨くんは安心したように、靴を脱ぐと私を抱きしめる。

「波瑠がちゃんといる……」

そう耳元で囁くのは何度目だろう。
優磨くんは私がこの部屋に戻って来てから毎日ちゃんとここにいるのか不安になるようだ。朝起きると私が横に寝ているか確認し、帰ってくると部屋が明るいことに安心するのだ。

相変わらず突然のスキンシップをやめる気はないようで、もう戸惑うことも怒ることもない。いつか増えるかもしれない家族の前でも続けるつもりなのかは分からないけれど。

左腕を優しく掴まれた。

「ちゃんと身に着けてくれてありがとう」

以前優磨くんにもらった腕時計を今再びつけている。

「あ、外すの忘れてた」

昼間仕事から帰ってきてそのままつけっぱなしだ。このまま料理をしていても邪魔じゃなかったから気づかなかった。

「すっかり腕に馴染んじゃった」

「それはよかった」

優磨くんは腕時計にキスをして、私の唇にもキスをした。

「ん……ご飯できてるよ」

「はーい」

体が離れてもそのまま手を引かれリビングに戻る。

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