同期の御曹司様は浮気がお嫌い
今まで立場の違いを感じたことは無かったけれど、運転手がいるなんて本当にすごい人みたい……。
「どこ行くの?」
「落ち着いて話せるとこ」
怒っているわけではないようだけど、優磨くんの声は低い。座席の上で私の手はずっと優磨くんに握られている。強く握られているわけじゃないのになぜか振りほどけない。
「着きました」
車はライトアップされた綺麗な洋館の敷地に入っていく。5分ほどしか走っていないのにもう着いたのだろうか。駐車場に停まると優磨くんに手を引かれ車から降りる。
「泉さんはここで結構です。帰りは歩きますので」
「かしこまりました。明日もいつもの時間にお迎えに参ります」
「その話は今はいいですから……」
何故か私に聞かれたくなさそうな優磨くんは慌てて泉さんを制する。
車を見送ると手を引かれたままライトアップされた庭を抜けて目の前の洋館に入った。どうやら食事のできる店のようだ。
店員に個室の希望をすると私のアパートよりも広い部屋に案内された。
ライトアップされた庭が見渡せる大きな窓と、壁には美しい絵と花が飾られている。
円形のテーブルが中央に置かれ、何人も座れそうなほどイスが置いてある。けれど優磨くんは敢えて私の隣に座るから緊張する。
優磨くんはワインとカクテルを頼んだ。
「アルコール苦手だったよね。カクテルも一杯なら大丈夫かな?」
私の好きなものを覚えていてくれることが嬉しかった。
「優磨くんはいつもこんなところで食事してるの?」
「まさか。ここに連れてこられるとは思ってなかったよ。居酒屋って言えばよかった……」
「あの方は運転手さん?」
「まあ……今だけね。本当は父親の秘書」