同期の御曹司様は浮気がお嫌い
厳しい顔に言葉が出ない。
「まあいいか。また取りに来るから」
私の手からバッグを取って肩にかけると、驚いて固まる私の手をいきなり握って歩き出す。
「ちょっと優磨くん!」
逃がさないとでもいうように強く握って早足になるから今度は私が怒る。
「なんなのいきなり、びっくりするじゃん」
「無理だ」
「何が?」
「安西さんが辛そうなの見てられない」
「…………」
強引な優磨くんを見慣れないから戸惑って何も言えなくなる。
しばらく歩くと高層マンションの前に来た。それは駅からも見えるほど目立つところだと気づいた。
「もしかしてこのマンションに住んでる?」
「そう」
私の手を握ったままオートロックの操作盤で暗証番号を入力する。ホテルのようなエントランスを抜けてエレベーターに乗った。
「すごい……」
思わず呟いた。
さすが城藤の御曹司。住んでいる部屋も格が違う。
「もともとは俺の友人が住んでたところなんだ。その人が結婚して引っ越したから代わりに俺が住んでる」
「その人が購入した部屋なの?」
「最初に買ったのは俺の親。というか用意した部屋ってとこかな」
どうして優磨くんの親が息子の友人に家を用意したのだろうと不思議に思ったところでエレベーターのドアが開いた。
「俺の部屋に入る前に言っておきたいことがあるんだけど」
「何?」
これ以上何かあるのかと身構えると「俺の部屋汚いけど驚かないでね」と言って優磨くんは部屋のドアを開けた。
外観通り中は広くてきれいだけれど、玄関から廊下にかけていくつか段ボールが積まれている。
「どうぞ」
リビングに入ると中央にソファーが置かれ、壁沿いに大きなテレビが置いてある。その横にもいくつか段ボールが置かれ、テーブルの上には雑誌や書類がたくさん置いてある。