同期の御曹司様は浮気がお嫌い
「ちょっと持ってて」
どういうことだと見上げた瞬間、優磨くんの腕が私の膝の下と背中にもぐりも込み体を持ち上げられた。そのまま抱えられ車の外に出される。
「下ろして!」
初めてのお姫様抱っこに驚いて怒るけれど、優磨くんは「車の鍵」と私の持つキーケースを顎でしゃくる。
「鍵かけて。そのボタン押して」
私は言われるままキーケースの中の車のリモコンを押した。背後でロックがかかる音がする。抱きかかえられたままエレベーターに乗り、強く言われるままボタンを押す。
「恥ずかしいから下ろして……」
「下ろしたら逃げるでしょ」
その通りで逃げるつもりだった私は何も言い返せない。細身の優磨くんに軽々と抱えられるほど私の体は軽くないのに、重そうな顔を一切見せない。
「鍵開けて」
私が戸惑いながらも部屋のカギを開けると抱えたまま器用にドアを開けた優磨くんは私を寝室まで連れていく。
ベッドに優しく下ろすと靴を脱がされ布団をかけられた。
「ここまでしなくて大丈夫だって……」
体を起こしてベッドから下りようとすると優磨くんに止められる。
「今日は会社休みなよ。というかもう行かなくていい」
「え?」
「あんな会社辞めていい」
驚いて目を見開く。
「無理だよ……すぐに転職なんてできないし、貯金もないし」
「なら俺が養う」
「はい?」
「安西さんは俺が支える。だからもう会社辞めていい」
「……ふっ」
優磨くんの言葉に笑ってしまう。
「初めて聞いたよ……優磨くんもそんな冗談言えるんだね」
笑う私を優磨くんは真剣な表情で見下ろす。
「俺は本気だよ」
「え……」
「ボロボロな君を見てらんない」
その言葉に優磨くんの姿が霞む。目から涙が溢れて瞬きと共に頬に流れる。