同期の御曹司様は浮気がお嫌い
「が……頑張ってるの……ボロボロでも……私……」
まだできる。まだ私は大丈夫。
「なら頑張る場所を変えて。まずは俺のそばで心を回復してほしい」
力強い言葉に思わず優磨くんと目を合わせる。
「ここの家賃はいらない。生活費は全部俺が出すから、安西さんには家事をお願いしたい。慣れてきたら新しい仕事を探して、そうしたら生活費は折半していこう」
思わぬ提案に私は言葉を失う。
「無責任なこと言わないで……仕事はそんな簡単に辞められない……」
「責任は俺がとる。絶対に苦労させない」
「…………」
まさかこんな話になるなんて思わなかった。
「どうして優磨くんはそこまでしてくれるの?」
私の質問に優磨くんは寂しそうな顔をする。
「この部屋の前の住人、俺の友達なんだけど、安西さんと同じなんだ」
「同じ?」
「結婚しようって時に婚約者に浮気されて破談になったの。そっから生活も仕事も何もかも滅茶苦茶になって荒れたんだ。その人を見てるから安西さんを放っておけない」
「その人って女の人?」
「ううん、男。俺の学生時代の家庭教師してくれた人」
では元カノじゃないんだ。今私が寝かされているベッドで優磨くんの彼女が寝ていたわけじゃない。
「今はその人も別の人と結婚して幸せだけどね」
「私てっきり優磨くんの元カノかと思ってた。一緒に住んでたのかなって」
「違うよ。俺は女性をこの部屋に入れたことない」
「そう……」
優磨くんが私に構う理由は分かった。女性を入れたことのない部屋に私を入れてくれたのも優しさだって理解した。
「だから安心してここに居ていい」