同期の御曹司様は浮気がお嫌い
優磨くんの笑顔にまた涙が溢れる。
甘えてもいいんだろうか。こんな優しい人に寄生した生活をしても……。
「言っとくけど、この家の家事は大変だからね」
「え?」
「俺マジで家事できないから、他の部屋汚いよ」
「そうなんだ……」
「安西さんはダメなところを見せちゃってごめんって言ったけど、俺だって完璧じゃないから。安西さんには俺の全部を知ってほしい」
「うん……」
今まで知らなかった優磨くんをたくさん見た。優しくて頼りになるだけじゃない。強引なところもあって、家事が苦手な普通の男の人だ。
「これから覚悟してね」
ドキッとするくらい色っぽい顔で微笑むから私は思わず顔を赤くして頷いた。
会社に休むと連絡して、優磨くんが隠していた他の部屋のドアを開ける。
「おお……」
廊下の左右にある洋室はそれぞれ怯むほど衣類や物が散乱している。
呆れてドアの前で固まる私の後ろで「ほらね」と優磨くんは呑気な声を出す。
「実家にいたころは家政婦さんがいたからよかったんだけど、一人暮らしって大変なんだね」
御曹司と私の生活環境の違いに驚いたのは何度目だろう。
「やりがいがありますね」
私は足元の衣類をまとめて畳むところから始めた。
会社に行かなくてもいいと思うと気が楽になってきた。どんどん笑顔が増えてくる私に優磨くんも安心した顔を見せた。
「そうやって俺のそばでは笑っていてね」
「え?」
「安西さんには笑顔が似合う」
「あ……ありがとう……」
そんなことを言われると照れてしまう。
赤くなった顔を見られないよう優磨くんに背を向けて、床の服を無心で畳んだ。