同期の御曹司様は浮気がお嫌い
マンションの地下で車に乗り込みながら優磨くんはまるで言い訳するかのように「もともと俺は自分で運転できるから……」と呟く。
「あのさ、もう一緒に住んでるんだし、安西さんじゃなくて下の名前で呼んでもいい?」
「うん、いいよ」
「波瑠」
初めて優磨くんに下の名前で呼ばれて照れてしまう。横目で見た優磨くんも前を見て運転しながらも顔を赤くしているように見えた。
「あのね、私料理に自信ないんだけど、今夜は何が食べたい?」
「何でもいいよ。波瑠の食べたいもので」
そう言われると困ってしまう。まだ優磨くんの好みがわからない。
「そっか……じゃあ考えとくね」
「俺の方が先に帰ったら俺が作るし」
「うん、ありがとう」
私が家事を担当することになったけれど会社を辞めるまでは優磨くんも料理をしてくれるようだ。とはいえ、あの部屋の様子を見る限り料理も期待できるかは分からない。優磨くんも仕事帰りにスーパーに寄って惣菜を買って帰る生活をしていたようだし。
こんなに優しくて頼りがいがあるイケメンにご飯を作ってくれる彼女がいないのは何故だろう。私と一緒に住んでしまったら増々彼女ができないと思うのに、優磨くんはそれでいいのだろうか。
駅のロータリーで降りると優磨くんの車が見えなくなるまで見送った。
お父様の会社である城藤不動産がどんな様子なのかは分からないけれど、優磨くんみたいな御曹司が会社に居たら女子社員が放っておかないだろう。実際私は早く転職して出て行った方がいいのかもしれない。彼の重荷になりたくない。