同期の御曹司様は浮気がお嫌い
先にお風呂に入っちゃおうかなと思い始めた遅い時間に優磨くんが帰宅した。玄関で靴を脱ぐ優磨くんのところに行くと疲れているのか怖い顔をしている。
「おかえりなさい」
そう声をかけると顔を上げた優磨くんは私の顔を見て微笑む。
「ただいま」
「お疲れ様、ご飯温めるね。ビールでも……」
飲むかと言いかけて優磨くんが私の目の前に立った。そのまま頭を傾けて私の肩に額を載せる。
「優磨くん?」
驚いて名前を呼ぶと優磨くんは溜め息をついた。
「波瑠の顔見ると落ち着く……」
突然の行動に戸惑うけれど、疲れているだろう優磨くんを拒否できない。抱き締められたことがあったけれどそれは私が弱っていたからだ。こんな風に甘えてくる優磨くんを初めて知る。
「あの……」
どうしたらいいのだろう。よっぽど仕事が疲れたのだろうか。
「お疲れ様……」
そう声をかける。優磨くんが笑ったのがわかった。
「浄化される気がする」
「え?」
「波瑠のそばにいるとさ、自分の嫌な感情とか、汚い思いを浄化される気がするんだよね」
「そ、そうかな?」
耳のすぐ近くで聞こえる優磨くんの声は疲れているからか色気があって、緊張してしまう。
「言われない?」
「そんなこと言われたことないよ……」
もし私にそんな力があるのなら、恋人は浮気したりしなかっただろうなと思う。
「波瑠は純粋だから……」
「え?」
「お腹すいたー」
顔を上げ私から離れてリビングに行った優磨くんはどかっとソファーに座り込む。
「今用意するね……」
何事もなかったような態度だから私もそれ以上優磨くんに言えなくなる。
「波瑠、これ何?」
優磨くんはテーブルに置かれたピアスを不思議そうに手に取る。