同期の御曹司様は浮気がお嫌い
「クローゼットで見つけたの。優磨くんの彼女のかと思って」
「え!? いや! 彼女いないから!」
慌てる優磨くんに「じゃあ元カノかもよ」と返す。
「探してるかもしれないから連絡してあげた方がいいよ」
「いや……元カノでもないから……」
暗い声を出すから私はそれ以上言うのをやめた。その辺はきっと触れられたくないのだろう。プライベートに踏み込むべきじゃない。
ご飯を食べた後の優磨くんはとても眠そうだから少し前から考えていたことを提案した。
「優磨くん、今夜から寝室で寝て。私は書斎で寝るから」
優磨くんは廊下の左の部屋で寝ている。大きな本棚に前の住人が置いていった本がたくさん置いてあるから自然と書斎と呼ぶようになった。そこを優磨くんの部屋にしていて、部屋の中央に置かれた大きな黒いソファーをベッド代わりにしている。私は書斎には必要なとき以外なるべく入らないようにしていた。
「いいよ……波瑠はベッドで寝て」
「でも……疲れ取れないよ?」
ソファーに寄りかかる優磨くんを見ていたら申し訳なくなる。
「大丈夫……だから寝室の話は禁止」
「そう?」
「これでも結構必至だから」
「え?」
「寝室の話されると……そっち行きそうになる……」
「それってどういう……」
「先風呂入るね」
突然立ち上がった優磨くんはバスルームに行ってしまった。
やっぱり疲れているのだろう。本当は大きなベッドで寝たいはず。でも私に遠慮して言い出せないのかもしれない。
早く仕事探して部屋を借りなきゃ。優磨くんの負担にならないように。
◇◇◇◇◇
「波瑠ごめん、金下ろし忘れた。これで足りるかな?」
優磨くんに渡されたお財布を開けると千円札が数枚しか入っていない。