同期の御曹司様は浮気がお嫌い
「何で波瑠が!?」
「えっと……」
どうしよう、美麗さんに連れてこられたって言っていいのかな……?
その時スマートフォンにLINEのメッセージがきたことを知らせる着信音が鳴る。見ると美麗さんから『優磨驚いた?』と可愛らしいスタンプ付きでメッセージがきた。
私は困惑している優磨くんに思わずそのメッセージを見せた。
「はぁ……」
優磨くんは状況を理解したのか溜め息をつく。
「あのね、泉さんは悪くないの……」
でも美麗さんが悪いとも言い切れずにいると優磨くんは「分かってる。姉さんが勝手なことをしたんだろ」と目を伏せる。
「波瑠を姉さんに近づけたくなかったのに……」
優磨くんは本当に困ったように顔を歪めた。
「これ……」
ずっと抱えたままだった封筒を渡すと「ありがとう」と打って変わって微笑んでくれる。
「波瑠に会えて嬉しい」
「毎日会ってるのに?」
「ここでは気が抜けないからね」
その言葉にガラスの向こうのフロアを見るとほとんどの社員が私たちを興味深そうに見ていた。それに気づいた優磨くんはガラスに近づきブラインドを閉める。
「ごめんなさい……私、来ない方がよかったよね……」
「いいんだ。会えてほっとしてる」
優磨くんはフロアの向こうが見えないのをいいことに私を抱きしめた。
「ちょっと! 優磨くん?」
「少しだけ。波瑠で息抜き」
いつも以上に疲れていそうな優磨くんを労わるように私も腰に手を回した。
「お疲れ様。いつもありがとう」
「うん……波瑠が俺の原動力だよ」
私の肩に頭をつける優磨くんの背中を撫でた。
職場ではきっと私の知らない苦労があるのだろう。それを見せないこの人が少しでも落ち着けるのなら、いつだって肩を貸す。