同期の御曹司様は浮気がお嫌い

「泉さんはもう行っちゃった? 波瑠はどうやって帰るの?」

「えっと……電車かな」

「それはだめ」

優磨くんは心配そうな顔をする。

「もう遅い時間だし一緒に帰ろう」

そこまで遅い時間でもないのに心配そうにする優磨くんに戸惑う。

「大丈夫。今から帰っても遅くはならないよ」

「波瑠に満員電車に乗ってほしくないの。もう少し待っててくれたら帰れるから」

「わかった」

過保護にされて悪い気はしない。優磨くんの負担にならないかは心配だけど。

「会社の前にカフェがあるからそこで待ってて。閉店までには行くから」

「はい」

微笑むと優磨くんは私にキスをする。ガラス一枚挟んだ向こうに他の社員がいるのに優磨くんの大胆さに驚く。

「下まで送る」

体を離すと部屋のドアを開けた。

社員が見つめる中フロアを抜けてエレベーターに乗る。扉が閉まるまで私はフロアの社員さんに頭を下げた。

「緊張した?」

優磨くんの質問に正直に頷く。みんなが私たちを監視しているようだった。

「ごめん。もう少しだから待ってて」

優磨くんに見送られて会社の前のカフェに入る。
カフェラテを飲んで待っていると優磨くんの会社から出てきた数人の女性社員がカフェに入ってくる。そうして私の席の後ろのテーブルに座った。

「ねえ、さっき城藤部長宛に女が来たらしいよ」

「マジ? 彼女かな?」

「そうっぽいって営業の子が言ってた」

城藤部長って……優磨くんのこと?

私の話題だと理解した瞬間再び緊張する。

「えー残念! 部長彼女いるの? その人羨ましいんだけど」

「もし結婚になったら玉の輿じゃん」

「どんな手使って近づいたんだろ?」

「やっぱどっかの社長令嬢でしょ。御曹司の相手には令嬢じゃなきゃ社長が納得しないよ」

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