同期の御曹司様は浮気がお嫌い
「いや、いいんだ。嫌な気持ちを波瑠の前まで待ち帰りたくない。波瑠のそばだけが俺の息抜きできる場所だから」
「そっか……」
そう思ってくれるのなら、私は優磨くんが落ち着けるように支えなければ。
「今夜食事に行けなくてごめんね。なるべく残業はしたくないんだけど……」
「大丈夫。もういつでも行けるから。本日無事に退職しました」
できるだけ笑顔を向ける。
4年も勤めていたのに円満な退社とは言えなかった。最後は辛いことばかりだった。でも優磨くんがいたから頑張れた。
立ち止まった優磨くんは私と向かい合う。
「お疲れ様。頑張ったね」
頬に手が添えられる。その手を私の手で包む。
「うん。優磨くんのおかげでここまで頑張れた」
優磨くんが微笑んだ時、正面玄関から社員が出てきた。
「ったく……ここは本当に落ち着かない。早く帰ろう」
再び私の手を取って車まで行く。
「大変なことも多いのに、それでも優磨くんはお父様の会社に来るって決めたんだね」
「まあ、色々と考え直してね」
何かを考えているのか複雑な顔をした優磨くんは車のドアを開けた。
「就活の時期に城藤系列の会社に入るよう言われたんだけど、就職先は自分で決めるって拗らせてた時期だったから普通に就活したんだ。でも、結局入社したあの会社も城藤系列と取引があるから、裏で手を回されて入れられたようなもんなんだよね」
シートベルトをしながら優磨くんは思い出すように呟く。
「俺は長男だから、結局城藤からは逃げられない。考えや体制が古いんだよね。子供が優秀とは限らないのに後継者にするなんて」
そう言う優磨くんは私から見てもとても優秀だと思う。