同期の御曹司様は浮気がお嫌い
定時で帰ると言っていた優磨くんが会社を出る時間に合わせて着くようにタクシーを手配して部屋を出た。
待ち合わせのホテルに行くとロビーには既に優磨くんが来ている。
「ごめんね、待った?」
「今来たところだよ」
自然と手を繋いでエレベーターに乗ると優磨くんは私の全身を見る。
「やっぱりよく似合ってるよ。可愛い」
「あ……ありがとう……」
優磨くんに可愛いと言われることにはまだ慣れない。
展望レストランまで手を引かれ、案内された席は大きな窓の目の前にあり、各テーブルとは数メートル距離が離れている。まるでここには二人だけしかいないような感覚になる。目の前はオフィス街の夜景が一望できた。
「綺麗……」
思わず呟いた。建物や車が密集した夜の景色をこんな高さからゆっくり見たことがなかった。
「このホテルは都会の景色を最大限活かして別世界を感じさせることをコンセプトに作ったホテルなんだ」
「もしかしてこのホテルって……」
「そう。城藤系列だよ。この席は特別な客しか座れない席なんだ」
「う……」
緊張してきた。その特別な席を取れてしまう優磨くんがすごい。テーブルマナーなんて知らない私がここに居ていいのだろうか。
「大丈夫。緊張しないで。俺たちしかいないんだから、マイペースに食事しよう」
こんなところに慣れた様子の優磨くんの一面に驚くばかりだ。一緒の会社だったころは庶民的な御曹司だな、なんて思っていたのだから。でも今の姿が本来の正しい姿なのかもしれない。
「波瑠は何飲む? ノンアルコールにしようか?」
「せっかくだから最初は優磨くんと同じものを飲みたい」
「俺はワインにするんだけど大丈夫?」
「うん」