同期の御曹司様は浮気がお嫌い
一杯だけなら眠気を感じ始めるくらいの酔いだろうから大丈夫なはず。
運ばれてきたワイングラスを優磨くんと一緒に軽く掲げた。
「今までお疲れ様。これからもよろしく」
「うん。よろしくお願いします」
ワインを一口飲んだ。
「ん、これ美味しい……」
ワインが苦手な私でも飲めるほどほんのり甘くて美味しい。
「波瑠が好きそうなものを選んだからね」
「優磨くんの飲みたいもので良かったのに」
「今日は波瑠のための食事だから、波瑠が気に入るものがいいんだよ」
微笑む優磨くんは窓からの夜景の光に照らされていつも以上に色気がある。こんな人に愛されているなんて私はとても幸せ者だ。
ワインを飲んで気分が良くなる。もう一度同じワインを頼んだ。
「そんなに飲んで大丈夫?」
「うん……とってもいい気分だから」
自分でもコントロールできないほど頬が緩んでいる。
「波瑠って本当にお酒弱いね。去年の忘年会を思い出すよ。波瑠が別人のように子供っぽくなって」
「ああ、あったねー」
忘年会でつい上司に勧められるまま飲みすぎてしまい、途中で記憶がなくなった。後から聞いた話によると横に座った後輩社員に抱きついて、体中撫でまわしていたらしい。後輩も酔っていたから気にしていないらしいけど、今思うととんでもない先輩で申し訳なかったと思う。
「抱きついたのが女の子だからよかったけど、男だったら後々気まずかったよね。俺は嫉妬してたかも」
「反省してます……」
「今後はそういうのは無しね」
「え?」
「俺がいないところで記憶を無くすまでお酒を飲んじゃダメ」
真剣な顔で私を見るから「もう気をつけます……」と答えて下を向く。