同期の御曹司様は浮気がお嫌い
その時優磨くんのスマートフォンが鳴った。
「波瑠……電話でないとっ……」
「んー……」
優磨くんから顔を離すと彼は電話に意識を集中してしまった。それでも私は抱きついたまま離れない。
「もしもし……お疲れ様です……はい……今ですか?」
仕事の電話だろうか。もしかして今から優磨くんは行ってしまうの?
「はい……今出先で……え?」
戸惑っているような声に私は顔を上げて優磨くんを見る。
「それは……」
深刻な事態なのだろうか。やっぱり仕事になってしまうの? これからお泊りなのに……嫌だ、行かないで……。
私はつま先立ちになると優磨くんがスマートフォンを当てている耳と反対の耳に口付けた。
「波瑠! ……だめ!」
怒られても寂しいものは寂しいのだ。
「ああ、すみません……今からで大丈夫です」
どうやっても仕事なのだ。仕方がない。仕方がないけれど……。
優磨くんの耳たぶを軽く噛んだ。その瞬間優磨くんの体がピクリと跳ね、手からスマートフォンが落ちた。
「波瑠!」
今度は私の体が震える。本気で優磨くんを怒らせてしまった。体を離して目を伏せる。
床に落ちたスマートフォンを拾うと「泉さんすみません」と優磨くんは謝る。どうやら電話をかけてきたのは泉さんのようだ。
「申し訳ないのですが、今から迎えに来ていただけますか? ……はい、本当にすみません……失礼します」
通話を終えると優磨くんはエレベーターのボタンを押した。
「来て」
私の手を引いてエレベーターに乗る。ドアが閉まると優磨くんは私をエレベーターの壁に押しつけキスをする。
「んっ……ゆーまくん……」
「ったく……酔いすぎでしょ……」
私を壁との間に閉じ込めながら呆れたように呟く。