同期の御曹司様は浮気がお嫌い

「社長は波瑠様の存在をご存じです。それでも私にお相手の写真を持たせたのは波瑠様を遊びの関係だと思っているからです」

目を開けそうになったけれど寝たふりをした。優磨くんが頭を下に傾けて私が起きているか確認しているような気配がしたから。

「俺も姉さんのように、好きな相手と結婚できないなら死ぬと騒ぐべきでしょうかね」

優磨くんは投げやりな言い方をした。

「差し出がましいようですが、社長に早く紹介なさるのがよろしいと思います。望まない相手と無理に結婚させるほど社長は非道ではありません。美麗さんの件でもご存じでしょうが」

今度こそ目を開けそうになるのを堪えた。
もしかして、優磨くんは誰かと結婚の話があるのだろうか。

「そうですね……でもまだ……波瑠を待ちます」

目を閉じたまま涙が溢れそうになる。
ご両親に紹介するのは私の気持ちを待っているということなのだろうか。

御曹司に政略結婚の話があることは想像がつく。それなのに私は都合よく優磨くんは私との未来を当たり前に考えてくれると思い込んでいた。

優磨くんはずっと待っていてくれるの? こんな私を? 優磨くんにたくさん迷惑をかけているのに……。
私がいつまでもフラフラしている間に優磨くんは違う誰かと結婚させられてしまうのだろうか。また私は大好きな人を失うの?

もう嫌だ。何も考えたくない。車の揺れが気持ち悪い……お酒が回って眠い……もう限界……。

そこからは意識が途切れ途切れになる。
車から降りて体を支えられながらエレベーターに乗った気がする。立っていることが辛いから玄関で座ったら優磨くんが靴を脱がせてくれた。
体がすごく熱い。今すぐ服を脱ぎたい。
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