同期の御曹司様は浮気がお嫌い

「だから汚い俺を見せても構わない薄い関係の女を作った」

なんて意味不明な理由だろう。理解に苦しむ。

「波瑠を大事にしたいから……俺の気が済むまで適当に付き合える相手がいると楽だったんだ」

「それで、汚い浮気してどう思ったの?」

「罪悪感がすごかった。でも波瑠が好きだから、俺は許されたい」

どんどん腹が立ってきた。

「許されたいって何?」

「また波瑠と一緒に居たい」

「奥さんがいるでしょ? 結婚してるのにバカなこと言わないで」

「でも愛してるのは波瑠だ」

下田くんの言葉の数々に怒りが湧く。今更だ。何もかも遅すぎる。

「奥さんと別れるってこと?」

「……今更別れられない」

「私も不倫はごめんです。下田くんにもう気持ちはないの」

「でも波瑠がほしい。俺を浮気相手にしてほしい」

「は!?」

「波瑠がそばにいてくれたら、俺はまともな人間に戻れる気がする。汚い心が綺麗になっていくと思えるんだ。まだ俺を忘れてないなら二番目の男にして」

怒りで体中が熱くなる。私がどれほど苦しんだか知らないくせに。下田くんと同じ最低な人間になれというのか。この人はどれだけ私を傷つけるの。

「あのね、私に下田くんと同じことを言った人がいるの。でもその人は私を傷つけたりはしないよ」

私と居ると強くなれると優磨くんは言ってくれた。彼のそばにいると私はただひたすらに幸せでいられる。私を二番目になんてしないし、二番目になりたいなんて言ったりしない。

「浮気相手? 二番目? やめてよ……まともな人間に戻れる気がするなんてよく言えたね」

私をその程度と思っている男と関わりたいとは思えない。
低い声を下田くんにぶつけても彼は無表情を貫く。

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