翠玉の監察医 消されるSOS
「……そうかもしれないですね」

二人で夕焼けの照らす道を歩いていく。その時、蘭は足を止めた。昨日と同じ視線を感じる。

「いました」

昨日と同じように木の陰から誰かがこちらを見ている。蘭が走り出すと相手も驚いたように走り出した。夕方のため、その姿がきちんと見える。小さな男の子だ。

男の子は木の間を通り抜け、蘭が追ってこられないであろう狭い場所へと走っている。しかし、男の子の前にアーサーが立ち塞がった。

「捕まえた!」

アーサーがいたずらっ子のように笑い、男の子を抱き上げる。男の子はブルブルと小さな体を震わせていた。

「どこか具合でも悪いですか?」

恐怖で体が震える、ということがわからない蘭は男の子をジッと見つめる。男の子の顔には切り傷がいくつもあり、着ている服は薄汚れていくつか穴が空いていた。

「神楽さん!アーサーさん!やっと追いついた!」

蘭のあとを追って来た圭介も到着し、蘭はゼエハアと荒い息を吐く圭介を見つめる。その呼吸は乱れていない。
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