翠玉の監察医 消されるSOS
「置いて行ってしまい、申し訳ございません」

蘭が謝ると、「クチュン!」と高い声がした。男の子がくしゃみをしたのだ。

「この肌寒い時期にこんな薄着って……」

アーサーの腕の中にいる男の子を見て圭介さんが驚く。アーサーが「とりあえず中へ行こう」と言い歩き始めた。

蘭は知らない。死者の声だけでなく、生者の声も聞けるようになるということなど……。



男の子を世界法医学研究所の部屋の中に入れると、「捕まえられたの!?」とゼルダとマルティンは驚いていた。そして碧子が「可愛いですね」と微笑む。

「とりあえず、子ども用の服ってあるか?こんなボロボロだし、シャワーを浴びさせて着替えせたいんだけど」

アーサーが言うと、碧子が「それならここにありますよ」と紙袋を手渡す。何故、碧子が子ども用の服を持っているのか?全員が疑問に思ったが、碧子からは聞かないでほしいと言いたげなオーラが出ていたため、全員が口を閉ざす。

「今からこのお兄さんとお風呂入っておいで〜。その間にお姉さんたちがおいしいご飯を作っておくからね〜」

ゼルダがそう言い、「えっ!?俺が風呂に入れんの?」とアーサーが驚く。

「俺、子どもの世話とはしたことない」

「じゃあ俺がしますよ。親戚の子どもの面倒とかたまに見てたんで」

圭介がそう言い、アーサーが「thank you!助かる」と言いながら男の子を圭介に抱かせた。
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