翠玉の監察医 消されるSOS

「そういえば、名前はなんと言うのでしょうか？ご家族の方はどちらに？」

蘭が訊ねると、男の子は「僕、空！中森空（なかもりそら）！」と落ち着いたのか体を震わせずに元気よく言う。ゼルダが歳を訊ねると「五歳！」と手を広げながら答える。

「すごく元気になったね。とりあえずお風呂に入れて来ます！」

圭介がそう言い、空をお風呂場へと連れて行く。それを見送った後、マルティンが「五歳の子どもがどうして研究所の敷地内にいるんだ？」と首を傾げる。

「確かに。この時間帯なら、お母さんが夕食を作ってて、子どもはお家にいるはずよ」

ゼルダがそう言い、蘭も「ご家族の方の姿はありませんでした」と言う。その時、何かを考え込んでいる様子だった碧子がハッと思い出したかのように目を見開いた。

「あの子の名前、どこかで聞いたことがあるって思ってたの。思い出したわ！研究所の近くにある住宅街に行った時に聞いたんだけど……」