翠玉の監察医 消されるSOS
「何それ……。ひどい……」

ゼルダが泣きそうな目をし、マルティンも「誰も通報しないなんて……!」と怒りをあらわにしていた。

「桜木刑事に連絡した方がよろしいでしょうか?」

蘭がスマホを手にしようとすると、「待って」と碧子に止められる。

「私たちは今、空くんを世界法医学研究所の建物の中へ連れ込んでしまっている。誘拐だと言われる可能性だってあるわ」

「そんな……!」

ゼルダとマルティンが抗議するも、碧子は通報する気はないようだ。蘭はスマホをテーブルの上に置き、どうすべきかを考える。しかし、いい案は浮かばない。

「こんな時、星夜さんならどうしていたでしょうか……」

蘭をアメリカに一緒に連れて行く行動力を持った彼ならば、必ず助けようとするだろう。しかし、蘭はどうするべきか悩んでしまい、動くことができない。そうしているうちに圭介が空を連れて部屋に戻ってきた。

「あっ!おかえりなさい!」

笑顔を作って空を見たゼルダは、「可愛い〜!」と言いながら空を見つめる。アーサーとマルティンは無言で写真を撮り始めた。
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